難聴亭日乗

つれづれなるままに その日ぐらし

12/3 暁!!三國学園 オルタナティブ

 

「人が一人で出来ることなんて限られている、大きな力の前では個人の力なんて本当にちっぽけなものよ。でも、だからこそ人は助け合う。励まし合って支え合って、一人では乗り越えられない大きな壁に立ち向かっていく」

 

舞台『魁!!三國学園 オルタナティブ』の主題は、これに収斂されている。絶対的権力を振りかざし学園を意のままにせんとする理事長の娘、司馬イザベラに立ち向かう、主人公諸葛亮子の印象的な台詞である。

演じる宮脇愛は、終演後の挨拶で知ったのだが、今回が舞台初挑戦だという。いきなりの主演、その緊張や不安、更には喉の不調も重なって、計り知れぬほどの大きな壁が立ちはだかったことだろう。それこそ、一人では乗り越えられなかった壁だ。

諸葛亮子のあの台詞には、宮脇愛の心のままな気持ちが込められていた。助け合い、励まし合い支え合って演じきった役。良い千秋楽公演だった。

 


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敬愛する萩原朔太郎の『月に吠える』序文を思い出す。

「人は一人一人では、いつも永久に、永久に、恐ろしい孤獨である」

続けて、詩人は言う。「我々の顔は、我々の皮膚は、一人一人にみんな異つて居る。けれども、實際は一人一人にみんな同一のところをもつて居るのである。この共通を人間同志の間に發見するとき、人類間の『道徳』と『愛』とが生れるのである」

そして、我々はもはや永久に孤独ではない…。

 

水魚の交わり」という仲の核心にあるのは、そういう詩的なものではないか。少なくとも、諸葛亮子と、彼女を慕う友である劉備桃花との仲にはそれを感じた。

 

この劉備桃花を演じる横野すみれ、アイドルを卒業して再出発の、これが一歩目の舞台だった。

昨年10月の初舞台『クォンタムドールズOSAKA』、今年7月の前作『アリスインデッドリースクール ビヨンドOSAKA』、どちらも生死のかかった内容だっただけに、感情の発露が激しく、観客をその渦に飲み込んで心奮わせる効果もあっただろうが、今作はコメディタッチの学園モノとあって、勢い熱情だけでは一筋縄にはいかない。伝えたいのは「友情」である。

 

草間玲、百村信子がそこに生きていた。彼女の中で絶えず脈打っていた過去の二役が、温かい「友情」の表現を深めたのだ。

舞台を通じて出来た、自分の役との、キャストの皆との、観に来てくれた人たちとの繋がりは、今回の舞台が終わっても変わらない、というようなことを、終演後の挨拶で、曹孟子役の高瀬川すてらさんが言っていた。

昨年クォンタムのときのアーデルハイドという魅力的な悪役、そして今回の凛々しく真っ直ぐで不器用なところが愛らしい曹孟子、思わず魅了されてしまうキャラクターへと息を吹き込めるのは、「経験」あってこそ… つまりはどれだけの役と出会い、キャストの仲間たちと出会い、観客に届けてきたか。そしてそれをどれだけ大切に抱え続けてきたか。

そんな「経験」の芽吹きを、すーちゃんに感じられた舞台だった。縦横無尽のコミカルな演技、これまでより本格的に取り組んだ殺陣のために、動きや覚えることも多かったという。そんな新しい挑戦も踏みしめながら、再出発の確かな歩みを見た。

 


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