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わーすた『Just be yourself』雑感

 

わが萩原朔太郎は『憂鬱の川邊』という詩でこう言っている。

 

げにそこにはなにごとの希望もない

生活はただ無意味な憂鬱の連なりだ

梅雨だ

じめじめとした雨の點滴のやうなものだ

しかし ああ また雨! 雨! 雨!

 

朝起きて、ああまた一日が始まる、この憂鬱。昨日も今日も明日も同じ…この果てしない閉塞感。

また雨!と項垂れ、力なくただ「時間」に押しやられる。当たり前のようにそうなるはずだった今日、ある曲が公開された。

 

 

4月19日(水)発売となる、わーすた3rdシングル『Just be yourself』

この曲は『劇場版プリパラみ〜んなでかがやけ!キラリン☆スターライブ!』の主題歌となっていて、その予告動画で少し聴けただけでも期待大と待ち焦がれていたものだった。

 

公開されたMVを、一度通して見る。率直な感想を言うと、涙してしまうほど感動したのだが、どんなMVだったかは全く残っていなかった。これは決してMVが悪いわけではない。私の見方もあるだろうが、単純に楽曲がヴィジュアルイメージを圧倒していたからだ。

廣川奈々聖1/19のブログで「イントロを聞いただけで胸の高鳴りが止まらないようなキラキラした曲」と言っていたのも首肯ける。

 

そして、このメロディーに乗る歌詞。あまりに感銘を受けたので、すぐにノートに書き写した。常日頃から考えている「時間」について、かなり興深く響いた歌詞だった。

 

詩人ボードレールは『時計(L'Horloge)』で、「時計!恐ろしき無感覚の凶(まが)つ神」と言っている。時間におびえるわれわれの心臓に容赦なく爪を立てる、絶対的な存在。

これをいとも簡単に超越したのが「秒針もクルり回るけど 神様も知らない瞬間」というフレーズ。一気に何かから解き放たれた思いだった。

 

さらに「未来へ歩く“今日”は 繰り返しのフリしている夢への道」サビのこの素晴らしい一文は、

雨、雨、雨…と繰り返される憂鬱に対して、その向こう側、夏の強き光を見せてくれる。それは「夢」だ。

 

あとに続く「一秒一秒が過去に変わる“イマ”」これにはボードレールの「一時間に三千六百回、秒は囁く、忘るるなかれ! と。──また蟲の聲して 早口に現在は言ふ、予は過去なり」がすぐさま思い出される。

後者では過去となった現在が「忘るるなかれ(Souviens-toi !)」と、毎秒ごとに積み重なってゆく悔恨を突き付け、さらに「予は不潔なる吸吻(きゅうふん)もて汝の生命を吸ひ上げたり!」と急かす。

しかし前者は、毎秒過去に変わっていく“イマ”を「全力で愛していこう!」と歌う。夢を抱いているからこそ、「10年後 30年後 過去になった“イマ”を 笑顔でね、思い出そうよ」と歌うのだ。涙の日々も未完成の今日も「時間の宝石箱」へ…

前作『ゆうめいに、にゃりたい。』は過去を旅する物語だった。そこで「夢があるからついてきてね」と歌っていたのが、今作を通して自分の中で繋がった。

 

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『Just be yourself』は、わーすたが「時間」を超えられるかもしれないアイドルである可能性を顕現してくれた重要な曲である。

2017年は勝負の年になるだろう、と昨年書いた。私だけでなく、こんなことはわーすたファンなら誰もが思っていることだ。そんなタイミングでこの曲が、しかも多くの目に触れる形で生まれたのはたまらなく嬉しい。

 

4月22日、わーすた史上最大規模フルバンドワンマン「The World Standard ~夢があるからついてきてね~」

トキメキとワクワクとダイスキが光り輝く夢への道は、いま確かに開かれている。